朝日が部屋を照らす。
隣で眠る昨日出来たばかりの友を起こさないように慎重にベットから抜け出した。

なんとなく部屋を見回す。
何というか、殺風景な部屋だな。
必要最低限の物しか置いてない部屋が住人の性格を表している。

「んん…。蒼音…。起きたの…?」
「あぁ、済まない。…起こしてしまったか?」
「んーん。大丈夫~。…眠い」

…無防備だな。猫みたい。
昨日私を圧倒した人間には思えない。
ベットに腰掛け、頬を撫でてやれば猫のようにすり寄ってくる。

「ねぇねぇ…もう一回寝なよ~…。ふぁぁ…」
「はいはい」

するりとベットに入れば、静かに寄り添ってくる。

   久し振りに感じる人の体温。

この何年間か感じた覚えのないそれに、もう一度眠りに引き込まれた。

◇◆◆◇◆◆◇

冷たい雨が降っている。
寂しさに涙を流す。
大声で泣いても意味がないって知っていても涙は止まらない。

『大丈夫?どうかしたのかい?』

ほんの一瞬雨が止んだように感じた。
傘を差されただけだった。

『だ……れ…?』
『僕かい?僕は―――』

―――――――――

強い痛みを感じる。

『やめて……っ!』

恐怖に泣くしかなくて。
あの日の優しい体温にはもう触れられない。
あの人は死んじゃったから。

『能力が使えても、人が殺せない人間はここには必要ない!!』

いやだ。
怖い。
痛い。
辛い。

おねがいだからたすけて。

◇◆◆◇◆◆◇

「…おね!蒼音!!」

ハッと目を覚ました。

「あ、かね…?」
「大丈夫?魘されてたけど…?」

怖い夢でも見た?と聞いてくる茜に、大丈夫だ、と返す。
久し振りにこんなに幸せだったから、暗い過去の夢を見たんだ。

 今は、今からは光の世界に生きる。

だから大丈夫だ、って。
もう何も怖くない筈だ。

「茜」
「どうしたの?」
「…お腹すいた」

そう言えば茜は苦笑交じりに答える。

「はいはい。ちょっと待ってて」
「あぁ」

なんとなく。
なんとなくこの人なら信じていいかなって思った。

だって、茜は―――

「蒼音!少し手伝って!!」
「分かった」




あの人の、あの温かい人の弟子だから。