人は愚かだ。
 大切なものを失ってから今まで大切だったんだと気がつく。
 それでは手遅れなのに。

───私が失ったそれは、もう戻ってこない。
 何時失ったのか。
 あれは確か、十年も前だった気がする。 
 始めて私に"愛"を教えてくれた人。
 私の"師"だった人。
 今でも忘れられないの。
 今も"愛"しているの。
「ねぇ…漣さん…今、何処にいるの…?」

 私の名前は海月茜。
 マフィアの幹部。「紅蝶」と呼ばれている。
 血液操作の異能を持つ。
 恋をして、散って、恋を嫌った。
 でも、まだ暖かな愛を忘れられない。
 それが私だ。
 孤独で、愚かで、冷たい。


 この物語は、そんな私と私の相棒、多乃目鈴の話…