「…っい」

あれ、ここは…。目の前に広がるのは、見たことがある部屋。

そこがお坊っちゃまの部屋であることに気がつくと、自分でも驚くほど一瞬で起き上がった。

どうしてまたここに!?そうだ、スーパーに行こうとして、お坊っちゃまに何かされて…。

とにかく、逃げなきゃ。帰らなきゃっ!!

ベッドから起き上がろうとすると、腕を捕まれてベッドに押し倒される。

「どこに行くつもり?」

「っ…離して!」

「琴葉、やめるなんて許さない」

「誰かっ!助けて!!」

嫌だっ!お坊っちゃまのおもちゃになんかなりたくないっ!!

手足を押さえつけられているせいで動けない。思いっきり声を張り上げて叫んでも、お坊っちゃまは焦った様子なんか全く見せない。

どうして?何で誰も来てくれないの!?

「無駄だよ、琴葉」

「誰かっ!助けて!!!」

「無駄だって。誰もいないんだから、助けが来るわけないでしょ?」

「っへ…?」

誰もいない?…そんなわけないっ!陣之内家には30人以上の使用人がいる。

それに、朝来たときは確かにいたのに…!

一体どうして…。