迎える時間よりも、過ぎてしまった時間を思い返せば時間が経つのはあっという間だ。私が彼等、狼嵐を受け入れてから早2週間が経っていた。

私の感覚では、付かず離れずの関係を保っているつもりだ。私が引いた一線に対して気付かないほど、察しの悪い奴らではないと信じたいもので、多少なりとも感じ取っているだろう。

そんなあやふや毎日の中で、明確な変化といえば、あの日から蒼の『お願い』だ。

彼は長い睫毛と大きな瞳を活かし、私を下から覗き込む。揺れた前髪がさらりと肌に伝い、自身の魅力を最大限に引き出す。

「なっちゃん、お姫様になってよ」

こんなことを毎日、それこそことある事に言われれば、それはもう半ば洗脳近いものになってくる。断るのにも段々と疲れが出てくるし、機械の如く私はそれを呆れの混じった声で返す。

「それは駄目だって言ってるでしょ」

姫、なんて明らかに危ない。あいつらに知られてしまう可能性が爆発的に上昇し、その心配だけで心労が募り私自身爆発しそうだ。