「では、軽く流してくださーい」




役員の決まり文句で俺はスタートする方向へ軽く流しを入れた。







よく晴れている。

空には雲一つない快晴。



湿度もあまり高くない。



気温もそこそこ。






5000mを走るには絶好のコンディションだ。










スタートラインに立った。



スタートはほぼカーブから始まる。





そこを利用してポジションを狙うのが作戦だ。








腰ゼッケンに1番をつけるのはいつぶりだろうか。





さっきから気になって何度も触ってしまう。











緊張はしていない。





ただ、





最高に楽しみだ。












大会2日目。




今日、俺は5000mを走る。



1500も800も捨てて、この5000mだけに全てをかけてきた。






今日、全てが決まる。








俺は、全国に




行きたいんだ。








涼々はもう、自分の足であのトラックを踏むことが出来ない。

だからこそ、俺が連れてってやるんだ。







胸に手を当てると

トクントクンと一定のリズムで心臓が鳴る。






いける。。








「on your mark…………」





一礼し、スタートラインぎりぎりのところに足をかける。








はじまる。


はじまる。







はじまる……………………。









パンッ!!







ワーーーーーっと歓声と応援が混ざって耳に入ってくる。








涼々、見てろよ。



俺がお前を全国に連れてってやる――――。