「清良さん……あの、今日ってお仕事終わった後予定あります?もし良かったら、一緒に飲みにいきません?」



「え?飲みに?」



掃除をしていた手を止め、千夏ちゃんの上目使いの視線を真っすぐに見つめ返す清良君。


私は、ちょっぴりだけ聞き耳を立てて、聞いていることを悟られないように窓拭きの手を止めずに磨き続けた。



「飲みかあ……行きたい気持ちはあるんだけどさ、俺、次の給料まで無一文なんだよね」



「え!?無一文!?」



「いや、それが俺バイクで旅してる途中にこの町で無一文になっちゃってさ」



「それは初耳です……。え!?じゃあ今お金ないのにどうやって暮らしてるんですか?まさか借金とか!?ダメですよ、借金は」



千夏ちゃんは、本気で清良君がいかがわしいところからお金を借りていると思ってたみたいで、目が本気だった。

そんな千夏ちゃんの迫力に負けた清良君が、必死で訂正した。



「いや、そんな借金は……あ、でも借金してるようなものか?彩音さん、お給料入ったら二か月分渡しますから」