「あの霜月先生…ちょっと宜しいですか?

お話がしたいという方がいらっしゃってるのですが…」


ステーションの入口で言いにくそうに話す看護師。


「患者?その家族?」


「いえ、遺族の方です」


またか、面倒だな。


「どうなさいます?帰って貰いますか?」


「いや、大丈夫。行く」


コーヒーを飲み干し、席を立つ。


「あっ、俺も行きますっ」


待合室で脚を組んで座っている遺族の前に立つ。


待っていた遺族は亡くなった患者の1人娘、といっても50過ぎの女性。


「あんた訴えるわ」


開口1番にそれ。


どうせ待つなら人の居ない応接室にすれば良いのに。


「え?う、訴えるって。

神那先生が何かしたんですか?」


「狼狽えない、鬱陶しい」


「何かって…医療ミスよ医療ミス!」


立ち上がりビシッと指を指す。


「えぇ⁉︎」


相変わらずのオーバーリアクション。


さっさと切り上げて続きをやろう。


「患者はいつもそう。

困った時は頭を下げ、助からなかったら医療ミスじゃないかと騒ぎ、訴えを起こす。

訴えるって言えば謝罪の言葉や慰謝料が来ると思ってるの?

くだらない」


「く、くだらないとは何よ!」


私がこんな性格だからか、こういうことはよくある。


なんでもかんでも医者のせいにされてたらそれこそ医者が居なくなる。