***


夜。


お風呂上がりの濡れた髪を乾かすこともせず、音のない部屋の中でただボーッとしている私はまさに、


───"抜け殻"



一点に集中しすぎてそれ以外の場所に白くモヤがかかるくらい。

ただ、ひたすらに遠くを見つめる。


頼くんが玄関を出ていった後、見計らったかのようなタイミングで部屋を出てきた美和子ちゃんは、私の泣き顔に心底驚いたって顔をして。


それから直ぐに、ギュッと抱きしめてくれた。
何を聞くでもなく、ただ一度強くギュッと。


そんなことを思い出していた私の髪から滴る雫がパジャマにシミを作っていく。それとは別に、手のひらに頬から水滴が垂れた……。



「うわ、私ってばまた泣いてる?」



不思議に思って手のひらへと視線を向けて初めて、その水滴が涙だってことに気付く。


……頼くんに気持ちが届かないのがこんなにも苦しい。悲しい。寂しい。


色んな気持ちで胸の中はグチャグチャだ。
こんなことになるんなら、初めから頼くんに涼くんとのことをお願いするんじゃなかった。