俺の目の前に立つこの少女は確か、時折廊下ですれ違う生徒…。
特別自分と関係の無い3年生がなぜ自分に声をかけてきたのだろうか。
そんなことを思いながら、少女の指さす紙を見る。


ペケが山ほどある。
どうやらこの生徒は数学が苦手らしい。

しかも、間違った問題をすべて俺に教えてくれと言っている。


(はあ…)


見ての通り今は作業中でとても忙しく、知らない生徒に教えているヒマなどこれっぽっちも無い。


「でも…明日に平均点以下だった人はまたテストがあるの」


悲しげな少女の瞳は真っ直ぐに自分のところへと向けられている。
しかも、周りの教師の視線が痛い…。


「どれ?見せて」


俺は仕方なくこの生徒の言う事を聞くことにした。そして少女の手元にあるテスト用紙に目を落とした。