あたしの恋は実らない

だからあたしは恋愛をした事がない


今なんて小学生でも彼氏がいたりするのに


あたしが小学校の時ずっと好きだった子は
私立の中学に行った、頭が良い子だった
多分そんな所に惹かれたんだろう
今思い返すとそんなにタイプでは
なかったかもしれない

あたしはどちらかと言うと体を動かすのが
好きなわんぱくタイプだったから
憧れがあったのかも
まぁそれから会ってもいないんだけど
つか元々そんなに仲良くもなかったけど

あたしの恋は相手に気付かれることなく
いつも終わりを迎えるんだ
でもたとえ相手に気付かれたとしても
恋愛になる事なんて断じてない

あたしが好きになるのはいつも同性だからだ
小3ぐらいですでに気づいてしまう
もしこんな気持ちがバレたりしたら
あたしは学校なんかに来られなくなる
だから気持ちなんて伝えなくてもいい
伝える勇気もないから大丈夫だ


中学に入ると同じクラスの子が気になり始めた
振られてもいない恋が終わったばかりなのに
全くもって節操ってのがあたしにはない

まあ、でもこの恋もすぐに終わる

その子は可愛い、すごく可愛い子だった

2学期が始まってすぐに男バスの先輩と
その子が付き合っているとクラスに噂が流れた
噂の真相を聞くために放課後の教室で
その子の周りに仲良しの輪が出来る

まあ、噂は本当だからその子も否定しない
彼女は少し照れた表情で隣にいたあたしに
助けを求める
そんな顔でもあたしには可愛いく見える

なんであたしがこの位置につかないと
ダメなのか理解不能だけど、仕方ない
あたしの部活がクラスで唯一の女バスだからだ

あたしとその子には元々接点がない

初めてクラスに入った時にただ可愛いくて
目に入っただけだ

勿論そう思ったのは
あたしだけじゃないはず

聞かなくても聞こえてくる噂話
クラスの男子何人かはその子を好きだったはず

過去形なのはあたしの想像だけど
中には初恋だった子もいたと思う

所詮中学生の恋なんて、マセてもいない限り
相手に気持ちを伝えるなんて出来ない
そんな所はあたしと似たり寄ったりで

だからこんなお子様達相手なら2つ上の先輩は
余裕で勝てるはず
つか実際に勝ってるし、まぁ大人だしね

どうせ報われることがないなら、せめて
その子と接点を持ちたいと思っただけで
男子には出来ない女子の武器を使っただけ
勝負出来ないなら、このポジションぐらい
望んでもバチは当たらないと思った

あたしはその子の恋に協力したんだ

厳密に言うと仕掛けさ せ ら れ た か ら だけど
悲しいけどこれが現実
好きな子と両思いになるなんて
想像の世界だけ、他は知らないけど
あたしにとっては本当に妄想
もしもボックスが欲しいと思う今日この頃だ


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事のきっかけを説明する

一学期も終わろうとしていた7月半ば
部活が終わって片付けをしていると
新部長予定の茅野先輩から呼び出される

うちのバスケ部は3年の夏に世代交代をする
勿論その後も3年生は部活にも出てくるけど
部を主導するのは2年生だった

片付けが終わったら校門の前で待ってて
欲しいと茅野さんから言われた

茅野さんはあたしより、勿論背が高く
スタイルがいい美人さんで学校の中でも
有名な人だった
だから茅野先輩が新部長になると決まった時
誰も文句は言わなかった

3年生にはそりゃ劣る部分はあるかもだけど
2年生の中では1番上手いし、なんせ目立つ

そんな美人な茅野さんは怒ると凄く怖い人で
一年のあたし達はまだ怒られる事はないけど
2年の先輩らが怒られている所は何回も見た

同学の人らにでもちゃんと指導出来る所も
認められたんだろう

そんな茅野さんに呼び出されるなんて
思ってもみなかったあたしは緊張感で
泣きそうになったのを覚えている


一年だし、基礎練ばっかりでコートにも
立っていないあたしに用があるなんて
あたしが何かしていない限りはあり得ない

途中お腹が痛くなってきてブチろうかと
考えたけど、そんな事したら部を辞めないと
いけないかもしれない

あたしの頭はパニック状態のまま
みんなが帰って行く校門の前で
ひたすら犬のように茅野さんを待っていた

クラスの何人かが声をかけて帰っていく
帰れるみんなが本当に羨ましかった
クラスの子と喋っていると少し気が晴れたけど

先輩に待ってて言われたと説明したら
男子の一部が脅してきたので
そいつらには思いっきり蹴りを入れといた


そんな場面を後ろから来た茅野さんに見られる

元気だね、待たせてごめんね

茅野さんは笑顔であたしに声をかける


ああ!い、いや!お、お疲れ様です!!

あたしはいきなりの部長の登場にキョどり
声がうわずってしまった

その先輩の後ろから男の人が走ってくる
その男の人は男バスの元部長だった

〈いや、なんで???

女バスの新部長と男バスの元部長が
いったいなんで、あたしの前に立ってるのか
理解が出来ずにまたパニックになる
先輩らが話してる事なんて頭に入ってこない
あたしは流れされるまま
学校から少し離れた公園に連れていかれた

公園まで行く途中、色んな人に見られる
そりゃ目立つ美人にカッコイイと評判の
男バスの元部長、その間に挟まれるあたし




公園に着いて先に口を開いたのは元部長だった


真山さんのクラスにさ、片瀬さんているだろ?


その片瀬と言う言葉を聞いた瞬間にあたしは
なぜ呼び出されたのかわかった感じがした


真山はあたしの苗字で名前は涼(りょう

片瀬はあたしの好きな女の子で名前は愛(あい

で、男子バスケ部元部長で体が大きいくせに
照れたようにベンチに座って
モジモジしてるこの人は白石太一さんで3年生


ベンチに座る白石さんの横で腕組みをしながら
見下ろしている茅野さんは2年生で名前は
確か芽衣(めい)さんだったはず


片瀬さんがどうかされたんですか?


白石さんの言いたい事がわかっていながら
あたしは白石さんの前に立って聞く

いやぁ‥その‥

なかなか切り出さない白石さんに業を煮やして
茅野さんがあたしを見て言う

好きなんだって、その片瀬さんの事!

〈やっぱりね‥

ああ‥そうなんですか

〈人に言わせんなよ

はっきり言ってあたしはこんな風に
ナヨナヨしてる男は嫌いだった
たとえそれが先輩でも関係ない


なんでお前が言うんだよ!

あんたがいつまでも言わないからでしょ!

白石さんと茅野さんは夫婦喧嘩のように
ギャーギャー言い合っていた


要するに同じクラスであるあたしに
片瀬さんとの接点を作って欲しいってやつ

まあ、このまま言った訳ではないけど
白石さんは凄く顔が明るくなって頭に花が
咲いていた

なんであたしなんだろ?だったら小学校が
一緒の子らに頼んだ方が早くないか?

そんな事が頭によぎったけど、もしかしたら
片瀬さんと仲良くなれるチャンスかも?
下心が大きく上回ってしまったあたしは
とりあえずどうすればいいのかを聞く


白石さんの案はまず、あたしが片瀬さんと
仲良くなって遊びに行くぐらいになり
そっから白石さんが混ざるようになる
んであたしが抜けて2人で遊ぶようになる
で、告る!だそうだ


あたしは思わず茅野さんを見た
茅野さんはあたしの視線に気付き
白石さんの頭を殴るように促してきた

そのジェスチャーにあたしは大笑いした


なんで笑うんだよ!いいアイデアだろ!?

いやいや、先輩!申し訳ないですけど
上手く行き過ぎです

ええー!

ほら言ったじゃん!
茅野さんは呆れたように白石さんに言う

それだったらやっぱり最初からあたしを入れず
接点持った方が早くないですか?
これも頭に浮かんだけど言えなかった

とりあえずこれはあたしにとってのチャンスだ
背景がどうであれ、片瀬さんと遊べるなら
手段を選ばない方がいい

今までのあたしはそんな所にまで
行けなかったんだから、人の手を借りてでも
その人の側に行きたい

言うなれば、白石さんとあたしは同志だ
それに女である分あたしの方がまだ‥

この感情がどれだけ幼い事なのか
後から思い知らされる事になるけど
この時は何にも考えてなかった