瞳は志皇のプロポーズを受け、仕事も辞める手続きをし、
引越しの段取りをしていた。

ふとした時に、思い出すのは志皇の言葉だった。

〝俺は、「伊世乃 瞳」という人間を丸ごと愛しているんだ 〝
という台詞だ。


私は航を愛してた?愛せてた?

連絡が取れなくなった理由を考えると、頭がぐるぐるとする。
自分勝手な恋心や欲求をぶつけてたのではなかったのだろうか。


つい志皇の思いと私の思いを比較している自分がいた。

私は、鈴崎航という人間を愛していたのだろうか。
志皇に感じたことが愛だというのならば、
ただ「好き」というという気持ちだけて突っ走っていたのではないだろうか。



「よし、これで最後」

引越し荷物の梱包を終えると、インターフォンが鳴った。

「はーい」

きっと、志皇に違いない。