…気が付くと、自室の机の椅子に座っていた。

どうやら少し居眠っていたらしい。


(そうだ…。ミコは…?)


半分朦朧とした頭でまず浮かんだのは、子猫のことだった。

随分と入れ込んでいるな…と、己のことながら苦笑を浮かべつつも視線は既に部屋中を見渡して、その姿を探していた。

途端に思わぬものを視界に入れて、瞬間ゾッとする。


ミコが好きで、いつも外を眺めている窓台の前。

そこに人影が佇んでいたのだ。


(…全く、気配を感じなかった)


そのお陰で、柄にもなくビビってしまったではないか。


だが、よくよく見てみれば気配を感じなくても何ら不思議はないことに気付く。


(人…では、ない?のか…。女…?)


明らかに普通じゃない。

人外のもの…というと大袈裟な気もするが、そこに実体がないということだけは分かった。

霊の類か、はたまた別のものか。

だが、自然と悪意のあるものでないことだけは判った。


ミコと同じように、そこから外を眺めている後ろ姿は誰かに似ていて、そして何故だか寂し気だった。


(この…後ろ姿は…)


「お前…。もしかして、辻原…か?」

椅子から立ち上がり、遠目に声を掛ける。

何故彼女がそこに居るとか、そんなのは抜きで自然と名前を口にしていた。

その呼び掛けに反応するように、細い肩が小さく揺れた。