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「「シャロン…」」



誰かの呼ぶ声が聞こえた。

ここは…現実ではない。恐らく夢の中、だろうな。


明晰夢、とまでは行かないだろうが、
少なくとも夢という自覚はある。

私の名を呼んだのは、紛れもなくお母様とお父様だ。



「お母様、お父様…。」



声のする方へ顔を向けると、二人が見えた。ものすごく遠くだ。

一歩でも反対方向へ動けば、ぼやけてしまいそうなほど。



白と黒の空間。

私は黒で、二人は白。


まあ、当たり前だろう。

理由が浮かぶよりも早く、納得できた。



私が死んだとして、
天国と地獄のどちらへ行くかと
聞かれれば、地獄だと言える自信がある。



「シェリー……いえ、シャロン、復讐など、やめなさい。」



お母様の穏やかで優しい目がそっと私に
語りかける。

怒っているようには見えない。


それどころか幸せそうな顔だ。

私がすんなりと受け入れると
思っているのだろうか?



いや、私の夢なのだから、心の奥底で
ためらいを感じていて、それが夢に
写し出しているのだろう。



「なぜ、やめなければいけないのです?」



「そんなことをしても私たちは喜べない。
お前には生きてほしいんだ。」



お父様の気高く男らしい目が、
私を見つめる。

本当のお母様もお父様も、
きっと同じように思っているだろう。


だが、私の答えは変わらない。



「あなた方は、私の夢。
意見する権利など、ありもしません。

それに、私は誰に言われようと、
復讐を果たします。」