お店の年内営業は31日の夕方5時まで。元旦から10日までお正月休みだ。
 年末は、干支にちなんだ小物雑貨や大晦日限定の福袋も販売していて、最終日の今日も一日お客さんが途切れなかった。
 全員出勤で由里子さんも閉店間際に必ず顔を見せる。これもセルドォルの決まり事。
 時間ぴったりにシャッターを下ろし、しめ飾りと休業のお知らせを貼り付けた後は。レジと仕事の一年最後の締め。

「今年も一年間、ご苦労様でした! こうやって無事に仕事納めが出来るのも皆んなのお陰です。本当に有りがとう! 通販も野乃ちゃんの頑張りで順調だし、看板娘の果歩ちゃんとしっかり者の織江ちゃんが居るから安心してお店任せられる。牧野クンにはディスプレイとか力仕事、頼りっぱなしだけどすごく助かってます。来年もセルドォルを宜しくお願いするわね。皆んなの力を貸して下さい・・・!」

 由里子さんの感謝の言葉に、わたし達の方が胸が詰まってしまう。

「こちらこそ、お願いします・・・っ」
「あたしももっとガンバリますぅ!」
「・・・出来ることは何でもするっス」
「死ぬ気でやります・・・・・・」

 それぞれの思いを応えたところで、由里子さんからの恒例の差し入れ、シャンパンと有名店のスィーツで軽く打ち上げる。

「織江さん、たまには実家に帰らないんですかぁ?」

 果歩ちゃんに特に悪気は無い。だからわたしも普通に笑って返す。

「んー、そうね。まだ決めてないけど、向こうは向こうで旅行に行ったりするからあんまり都合が合わないのよね」

「へぇ~、ご両親て仲良しさんなんですね~」

 ウチなんかぁ、と彼女の話が切り替わったのを内心ほっとした。家族の話は嘘しか言えない。嘘を吐くのが心苦しいんじゃない、嘘を重ねて辻褄が合わなくなりそうなのが少し怖い。

 わたしに家族は居ない。
 本当の事をさっくりと云ってしまえば今後一切、誰もその話題を避けるだろう。優しい子達ばかりだもの。けれど他愛もない雑談にすら気遣いをさせたくはない。空気のように在るものに触れさせないなんて事は。

 ・・・違うわ。失(な)いものを憐れまれるのが、哀しいからだわ・・・。