瑞希お兄ちゃんに嫌われた。



「すまんことしたな、凛?」




太陽の光が届かない第2理科実験室で、私の気持ちは沈んでいた。

心配そうに私を見るヤマトに、投げやりで伝える。



「そっとしておいてもらえませんか?今は・・・・・何も言わないでください・・・・」

「そうはいかんで!問3の問題を教えてもらわんと、次のテストが~」

「そっち!?お前この状況で、そっちが優先順位か!?」



世間では夏休み目前であり、テスト週間スタート初日。

密会場所である第2理科実験室で、私はヤマトに勉強を教えていた。

時間はお昼休み。

教えるのにも、ラストスパートをかけるのにも、一番長い休憩時間だった。



「僕が渡したノートは見たんですよね?テスト対策をまとめたノート?」

「そりゃあ、徹夜で書き込んだで!ちゅーことで、ここはどないすんねん?」

「きちんと読んでれば、質問しなくても良いところですよ!?」

「ほな、疑問に答えてぇーな!」

「意味は同じでしょう?わかりました、教えますよ。えーと、問3ですよね?ここは主語がね~」

「わははは!そういうことかい、おおきに!イングリッシュなんぞ、日本からでーへんのに覚えても意味あらへんのになぁ~」

「日本にイングリッシュを使う奴がいっぱい来てるでしょう?覚えておいて損はないです。」



一瞬、屁理屈だと思ったけど、言われてみればそうかもしれないと思う。



「まぁ・・・世界の共通語が英語ってだけですから・・・諦めて下さい。」

「うはははは!なんや~けっきょく凛もわしと同じ気持ちかいな!?この照れ屋さんめ!」

「いいから、勉強に集中してください。君の成績だと、赤点になるかならないかですよ?」

「うはははは!菅原凛は満点かどうかの心配をして、凛道蓮は瑞希お兄ちゃんのことを心配してるっととこかぁー?」

「・・・・なんです、急に?」


ヤマトのノートに走られていたペンの動きを止める。

これに相手は、教科書とノートを見比べながら言った。