10月1日になって、数名の異動辞令が出た。

三上くんの異動よりショックな出来事が!

平内さんが、営業に異動だって!

フロアが変わっちゃったら、もう雑談とかできなくなっちゃう。香さんのおまけでいいからおしゃべりするのが、私の癒しタイムだったのに。

「香さん、香さん。聞いてましたか?」

「聞いてないよ、全然。でも内示出てたんじゃないかな。今朝、会社行ったら面白いことあるかもって言われたの」

「今朝?」

「あ、えーと。うん」

赤くなってる。

そうか、平日でも泊まったりしてるんだ。2人って同じ路線だもんね。

意外にも傷つかない自分に驚く。三上くんじゃないけど、振られたのに切り替え早いね、私も。



「着替えとか置いてあるんですか」

「近いから、自転車で自分のうちに帰ってからきてるの」

すごく言いにくそう。まあね、会社だし、人に聞かれても困るので、この辺で追及をやめておきましょう。



「三上もかなりおどろきじゃない?」

香さんも話を切り替えて来た。

「私、実はぽろっと聞いちゃってたんですよ、本人に。同期ぐらいいいかと思っちゃったみたいで。黙っててすいません、どこまで言っていいのかよくわからなくて」

「言わないほうがいいよ、いろいろ同時に移る人がいるしね。平内が正解なんだよ、たぶん。でも冷たいよね」

香さんが拗ねている。かわいい。いわゆるアラサーなのにかわいく見えるとか、反則じゃないだろうか。年齢じゃないんだよねぇ。私には出せないかわいげだなぁ。



三上くんは、ウサギにあいさつに行っているらしくいなかった。午後になって帰ってきて、みんなにあいさつしてる。

「たぶんずっとウサギじゃないだろうから、まあ数年がんばってこいよ」

「はい」

「いい経験になるよ」

色んな人に声かけられて、ニコニコ答えてる。もう切り替えたのか、がんばって笑ってるのか。引き継ぎは今週末いっぱい。寂しくなるなぁ。



あれ、さみしいんだっけ、私?

平内さんもいなくなるし、同期も抜けるし、寂しくていいんだよね? それとも三上くんのさみしがりが移ったかな。