毎日が楽しみな、春休み。

3月24日が終了式だったから、ひーふーみーよー…。

春休みが始まって、もう一週間が経っていた。

明日から、4月が始まる。



「はぁ~ん…、これが安堂くんのボタンなのね…」


うちに遊びに来ているナッチは1時間に1回の礼拝だと言って、安堂くんのボタンを眺めていた。

やっぱりこの人、見ていて飽きない。


「それにしても!知枝里っ」


礼拝が終わったらしいナッチが顔を上げた。


「ん?なに?」


ポッキーを咥えて、おしゃれスナップ写真を見ながら、あたしも返事をする。

するとこちらを向けと言わんばかりに雑誌を取り上げられた。


「あっ…」

「あ、じゃないわよっ!あんたまだ告ってないんでしょ!? もう、1週間だよ!? 1週間も毎日のように遊んでるくせに…、遊んでるくせに……何で進展してないのよーーーーーーーっ!!!!」


ナッチの唾が、顔面に飛んだ。


あの日以来、毎日のように安堂くんと会っている。

約束通りボタンを付けに行ったり、一緒にDVDを見たり、桜の観察に行ったり、春休みの宿題を一緒にしたり。

でも。

たったの二文字をあたしは言えずにいる。


「なんで、って言われても~…」


心の中では溢れているのに、向き合うと、好きって言えなくなる。

あんなに彼氏が欲しかったのに、今は好きと伝えてフラれることが怖かった。

たとえ好きだと言えなくても、むしろ好きだと言わない方が、今みたいに一緒にいられるんじゃないかと思うと。


「だいじょうぶ!絶対フラれるわけない!」


ナッチはいつもこう励ましてくれる。


「逆に不思議なんだけどさ、何で安堂くんは好きって言って来ないんだろ」


この1週間、同じ会話を繰り返していた。


「これだけ両思い項目に当てはまってるのにさ?もしかして安堂くんって草食系?告られんの待ってんの?」