バレンタインデーは日曜日だから、詩月に付き合ってチョコレートを作るのは週末だと思っていた。
のに。

「さぁ、はーちゃん、やるよー!」

週中、祝日の午後、突然部屋に入ってきた詩月はエプロン姿で、長い髪も結んですっかり準備万端だった。
読んでいた本を膝の上に落とした私は、数秒間やる気に満ちた詩月をぽかんと見つめた。

「え・・・今日なの?」

確かに、週末とも言っていなかったけれど。

「だって、今日じゃないとダメだって言うんだもん。」

誰が?という質問はスルーされて、ほらほらと詩月に背中を押されながら私はキッチンへと連行される羽目になった。

で。
そこには予想だにしないもう一人がいて。
材料の並べられたダイニングテーブルで、勝手にお茶を淹れている姿に絶句した。