リーネは泣きじゃくったら手の施しようかない子供だった。
「そうおっしゃっても、ダメなものはダメです。リーネ様は女の子でしょう」使用人のライアは困り果てた表情で言った。リーネは更に鳴き声をあげてしまうのだが、使用人の身分であるライアもどうすることもできないのだった。まだリーネは10歳であり、良し悪しの判断はできるが、男の子のように活発に動き回る遊びが大好きなのであった。しかし、自分は女であるがゆえに村の男の子達と一緒に山林での祭の代表に選ばれなかったことに悔しくて仕方なかったのだった。
リーネは衣服を握り、肩を震わせたときー
「リーネったら、まだ準備ができてないの。早くしないと他の方達をお待たせしちゃうじない」ーリーネの母であるサラであった。
サラは既にロングコートと淡い碧色のロングドレスを身につけおり、おもむきようの姿となっていた。
「あ、サラ様。実は祭に行きたくないと言い出されまして…‥」
ライアからきまづそうな表情で言葉を聞いたサラはまたの。という表情に変わった。
しかし、これ以上娘の言い分を聞くわけにはいかなかった。外にはもう荷物を乗せた荷車をだし、使用人たちにも既に暇を出している。ーつまり外出中はこの家はほとんど人気のない家となるためリーネを置いて外出することもできないのだ。
「リーネ、貴女はこのアウシュビッツ家の娘である以上、伝統ある政や、公式の場で貴賓席に出席しなければならないのです。今回の祭は男の子でなければ祭壇には立てないのです」

リーネたちが出席するこの祭は神の写しである神剣の前で平和を祈るために舞踊や歌などの催しがあり、王家の方々も臨席するためこの祭を観るため大勢の者たちがくることが常(つね)であった。
そしてこの祭の最大の見せ場は神の写しである神剣を貴族出身の男児が持ち、太陽の光を集め、大地に降り下ろすというものだった。その大地、つまりこの国の平和、豊かさを約束するというものだった。
神の剣を持てた男児は生涯誇れるイベント。それをがリーネなりたくても女という理由で選ばれなかったことに悔し涙を流していることを承知での話だった。

サラはリーネと同じ目線となるようしゃがみ、更に伝えた。
「貴女が女であることで、できないことがあるなら、女でしかできないこともこの世にはあるのです。」
リーネは母の言葉を聞き入っており泣くことはなくなっていた。
「あなたがこれから歩む人生で女であるからこそ、できること、喜びはきっとあるはずです。永く生きている私や世の女性が言うのです。わかりましたね」
リーネは優しいが気丈な母をみて、コクンと頷いた。母は立ち振舞いや作法などには厳しかったが子供だからといって無下にはせずやさしく善悪の判断や世の理(ことわり)について教えていたため、母が言うとうり女の自分が男よるもできることがあるのだろうという気がしていた。それが何であるか見当がつかなかったが…‥
「お話はここまでにして。さ、早くしなさい。外でお父様も待っていますよ」
はーいとリーネは泣きじゃくった顔を袖で拭くとパタパタと走っていった。

「リサ様…」ライアは心配そうな声で呟いた。
「あの子ももう11‥‥。子供だからといって男女のことわりは理解させないといけないわね」リサはライアに残念そうに微笑んだ。
「じやあ、留守中頼んだわね」
「はい、我々がしっかりお家をお守り致します」
ライアと話をした後、サラはリーネのあとへと向かった。