日曜日の夕方
小山課長は帰ってきた

いつものように
ただいま、と…



『おかえりなさい、お風呂の準備ができていますので先にどうぞ』


「小夜、体調はどう?」


私に掛けてくれた言葉なのに
私の名前じゃないように聞こえてしまう



『大丈夫ですよ』


出来るだけ笑顔で答えるが
小山課長の眉間には皺が寄っていた
キャリーケースを受け取り
リビングへ向かおうとするが
後ろから抱きしめられてしまった



「小夜」


耳元で聞こえる小山課長の声
すごく好き、
こうして抱きしめてくれる腕も体温も
何もかも…大好き


「小夜」


そう言ってくれるけど
私に向けられて読んだ名前じゃない


『…、ごめんなさい、あまり体調が…』


初めてだと思う
小山課長の誘いを断るのは…
わかった、と言ってくれ
私から離れていった小山課長

離れたことで暖かった身体が寒くなる
離れたくない、離さないでって言いたくなる自分勝手だ