意味分かんない意味分かんない。
何なのあいつ急に。


『日野ちゃんが好きだ』

そう言った日野雄大の顔が、声が、頭から離れない。なんでこんなこびりつくの。むかつく。


命令に背けば本性をバラす。ずっとそう言っていたのに、なんだか私は全くそんな気がなかったみたいだ。初めて気付いた。

こんなのもう、どうしようもないじゃん。


さっき日野雄大に掴まれた腕が、熱い。
心臓がうるさい。顔が熱い。


日野雄大は、私を救ってくれた人。

ずっとお兄ちゃんの死を認めずにいた私に、向き合って、真実を教えてくれた人。
それは私にとって、これ以上ない程大きなこと。


……私はあれ以来、空想上でのお兄ちゃんの姿は見れなくなった。それで良かった。

もちろん今も毎日お兄ちゃんのことを思い出すし、お兄ちゃんに心の中で語りかけてみたりする。

それでも理解している。もう居ないということは。受け入れている。


日野雄大は、私にとって特別だ。だけど。


別れたといえ、ひかりの好きな人。

──日野雄大の気持ちを受け入れられるわけ、ない。



日野雄大を裏庭のベンチに放って、一人で教室に帰ってきた。昼休みはまだ半分以上残っている。


「雪那」


ひかりに呼び掛けられて、思わず動揺してしまった。