ケータイ小説 野いちご

そして俺は、君の笑顔に恋をする

黒瀬凪咲という人





次の日から工藤の任務は始まった。




「おはよう、黒瀬さん」



「……」



「俺、工藤尋匡。これから君の護衛をします。よろしく」



「………ご勝手に」





高校への登下校が主な護衛時間。


休日は外出先にもついて行き、一定距離離れた場所から黒瀬凪咲を監視・護衛している。


その中で工藤が気付いた黒瀬凪咲という人の印象を挙げていこう。




一つ目


黒瀬凪咲は友達がいない。




学校の行き帰り、黒瀬凪咲はいつも一人だ。


誰かと一緒に電車に乗ったり、喫茶店によって女の子同士わいわい話したり、カラオケに行ったり


普通の女子高生ならやるようなことを彼女は一切やらない。


一人でマンションからでて、一人で電車に乗り、一人で登校する。


帰りも部活には入っていないのか、学校が終わると同時に一人で下校し、マンションには帰らずにバイト先の喫茶店に向かい、夜遅くまで働いている。


バイトが終わりマンションに帰るのは夜の十一時まわってからだ。


その間彼女はずっと一人。


とても健全とは言い難い生活。


一週間、二週間、一か月たってもその生活は変わらず、友達と呼べる人間は一人も現れなかった。


少しだけだが話してみた感じ、けして性格が悪いわけではないと思う。


むしろ人を気遣える優しい人間だ。


ちょっとばかし態度や目線が冷たいが。


それなのに彼女はいつも一人ぼっち。


そんな彼女を見ていて思う


黒瀬凪咲は極端に人とのかかわりを絶っていると。


友達も出来ないんじゃなくて、作らないんじゃないかと。


もしそれが勘だけでなく事実だとするならば、一体何が彼女をそんなふうにしてしまったのだろうか。






二つ目


黒瀬凪咲は強い。




雪村から聞いたところによると、彼女は複数の武術を会得しているらしい。


ありとあらゆる武術、格闘技を身に付けているため、そのへんの警官よりも腕が立つ。


実際、窃盗や痴漢など軽犯罪の検挙率では警官たちを差し置いて間違いなく彼女が一位だ。


そこで気になるのが、彼女の警護理由。


強い彼女をなぜ警護する必要があるのだろう。


工藤が雪村から聞いたのは『黒瀬凪咲を警護しろ』


それだけ。


その理由も何も教えられていない。


今はまだ様子見ということなのか、工藤はただ離れた場所から彼女を見つめ観察するしかなかった。




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