* * *





暖かい春も、いつの間にか過ぎて
今はほぼ毎日が雨。

葵が転校して来て
早くも2ヶ月が経って
世間は梅雨入りした。


じめじめした空気が
あたしのやる気を奪う。





「あぁー…。だるい。」

朝から雨の中、
あたしは傘をさしながら
学校へと向かう。


早く梅雨明けしないかな…。



そんな事を考えながら
水たまりを避けて
一人のろのろと歩く。





「朝からひでぇ顔。」



その時、背後から声がした。


もう、振り向かなくったって分かる。
この声のトーンで失礼な事を言う奴は
一人しかいない。



「うるさいなー。朝から。
相変わらず失礼な奴。」


「お、聞こえてた⁇」



そう、櫻木 葵。
こいつしかいない。



葵が転校して来てからというもの、
家が同じ方向なのか
時々こうして登校時に
一緒になることがある。


「ちゃんと歩かねぇと
ひかれんぞー。」


「わかってますー。」



相変わらず無愛想だし、
失礼な奴だけど
最初の頃よりは
話すようになった。



「⁇」


ボーッとしながら
歩いていると
前を歩いていた葵が
いきなり走り出した。



「ねぇ‼︎なんで走ってんの⁇」



あたしが叫ぶと
葵が振り返った。



「遅刻。」


「え⁉︎」



葵に言われ、慌てて携帯を見ると
あと10分でホームルームの
予鈴がなる時間だった。



「やばっ‼︎待ってぇー‼︎」


あたしも鞄を持ち直して
全速力で葵の後を追った。