椿の寝息が聞こえて何時間か経ったとき
側から人の気配を感じた














『桜……っ』



「ん…!?」















私は、椿のせいで酷く敏感になっていて
誰かが隣にいただけで叫び声をあげてしまいそうになったが……

私の口を誰かが塞いで
シーと言っていた
















だ、誰……っ!?
















『俺だよ。元晴』
















元晴………?

あっ…!


椿の元婚約者だったヤツ!

私を好きになり、簡単に椿を切り捨てた男



な、なんでここに…っ!!
















『椿と婚約を破棄した後……
桜から連絡が来ないから……

家に行ったんだ
だけど、桜も椿もいないって言われて…


嫌な予感がして、椿が前にこのビルを興味深く見てたから見に行ったら……

こんな状況になってたってわけだよ……』


















元晴は、私が縛られている縄を解くと
困惑した表情で私にそう言ってきた



















コイツの行動には、正直キモいが……

今は、助かった


感謝するよ、元晴




















『まさか、椿がこんなことするなんて……

椿と婚約しなくてよかったと心底思うよ』



















よく言うね

私と浮気して、椿を裏切っておきながら















『さあ、早くここを出よう!
椿が目を覚ます前に、ここを出ないと……っ!』





「無理」





『えっ……!?』




















私を縛っていた縄が全て解け
元晴は、私の手をとり逃げようと言ってきた

だけど、私は元晴の腕を振り払い
逃げることをしなかった

















『な、なんで……っ』




「私にこんなことした椿を許せると思うの?

椿を殺すまで、私は逃げない」




















そう……

こんな姿にした椿を……


私は絶対に許さない