――俺のものになれよ

あたしたちの関係は社長がそう宣言したあの日以前の関係に戻った…と言えば、そうなのかも知れない。

「藍田くん、今日の予定はどうなってる?」

社長専用のエレベーターで今日の予定を聞いてきた社長に、あたしは手に持っていた手帳を広げた。

この間の出来事があって以来、社長はあたしに手を出すことはなくなった。

“夏梅”と、呼び捨てであたしの名前を呼ぶこともなくなった。

社長と秘書と言う、元の関係に戻った。

なのに、あたしの心はモヤモヤとしていた。

元の関係に戻ったはずなのに、何でこんなにも気持ちが悪いの?

あたしは自分が思ったことを社長にそのまま言ったはずだ。

社長はそれを受け入れたから、あたしを自分のものにすると言うバカな考えをやめた。

それだけのことだ。

なのに、気分が悪い。

あたしの身に一体何が起こったと言うんだろう?