さて、どうしてこんなことになってしまったのだろう?

「まさか、自分の秘書がこんなことをしているとはねえ…」

あたしの目の前にいる男は、やれやれと呆れたと言うように息を吐いた。

まさに絶体絶命と言うヤツだ。

何としてでもいいから、この状況から逃げる方法を見つけなければ…。

動かない頭を動かして逃げ道を探そうとしているあたしに、
「見逃してやらない、と言うことはないよ?」

目の前の男が言った。

えっ?

それは一体、どう言うことなんだ?

そう口を開いて質問をしようとしたら、
「俺のものになってくれるって言うなら、考えてやらないでもないよ?」

形のいい唇が動いて、音を発した。

藍田夏梅(アイダナツメ)、26歳。

逃げれば地獄、進めば地獄の状況にとらわれています。