気がつくと、そこはお屋敷の中だった。
(信じがたい状況には慣れてしまった。)
振り返るとアンティーク調の、控えめだが品のある装飾が施された重たそうなドアが閉まっていた。
視線を前に戻す。
とりあえず、螺旋階段の隣にあるふかふかそうなソファまでトイフェルを運ぶ。
頑張った。
運び終わったあとに気がついたことだが、酷い傷口が目立っていた目は元通りになっていた。(血はついたままだったが)
もしかして…と思い、トイフェルの服をベッと捲ってみる。
血の跡は残っているものの、刺し傷と思われていた腹部の傷口は治っていた。
これも契約のおかげなのか…?
ひとまず安心し…
「随分大胆なんだね」
「?!」
…起きていたようだ。
「僕は別に構わないよ」
「私が構う。」
服から手を離し、少し後ずさる。
彼は体を起こしながら楽しそうに笑った。
そして、私の頭に手を乗せて撫でた。
「完璧だよ。よく出来ました。」
「私は何もしてない。」
「だってこうして家に帰ってこれたし、僕の体の傷は治ってるよ?」
どうやら私が彼になにかしたようだ。
「ありがとう。僕の我侭聞いてくれて」
「別に…気にしてない。」
最初は理不尽な要求だ、と思ったが、いつもの事だと割りきった。
だからそこまで我侭だとは思わなかった。
そして、彼に、この世界に興味があった、というのも少しあった。
昔から「魔法」とか「摩訶不思議な世界」というのは憧れてた節がある方だ。
少しワクワクしている。
自分らしくない。