境本は夜の町を背景に
照らされて
キラキラ輝いているみたいだ。

フェンスを掴んでいた左手を緩くほどく。
袖を捲ってやると手首には
くたびれた包帯が巻いてあった。
包帯止めを外して、
それもほどく。

見上げると冷めた表情のまま
境本はこちらをみていた。

「その表情が好き。」

「私はお前たち人間全部嫌いだよ」

傷口に張り付いた
包帯の最後の部分を少し乱暴に
取り払うと、少しだけ眉をしかめた。

手首には何本もの赤い筋が。

「そんなに死にたい?」

「死にたい。今すぐこの命を終わらせたいっ。なのにっ、何で私は死ねないの!?」

境本が慟哭する。
語気は強く乱れて、
手の甲に涙が落ちてきた。
思わずひざまずく。

彼女の傷口から溢れてきた血が
手のひらを伝って指先に落ちていく。
それが滴となって離れる前に
その血を舌でなめとった。

境本の肩がびくりと
震える。
手が逃げようとしたのを
許さないで、そのまま
血の流れてきた手のひらを遡り、
滑らかな肌の終わる手首に。

傷口の段差に鉄と塩の味。

「はぁぁっ、死にたい……」