ある日の午後。
あたしは城下の豊穣祭に来ていた。


「おー、賑わってんなぁー」

「はぁ」


なんで、せっかくの休日に、赤と豊穣祭に来なきゃなんないの?


時は、遡る事、数刻。
春日局様の一言で、始まった。



「才氷、赤。豊穣祭に行ってこい」


赤と2人、何事かと顔を見合わせる。



「豊穣祭に行く目的はなに?」


それだけ言われても、「は?」ってなるから!!
相変わらず、説明足りないなぁ。


「何、お前達にも休息が必要だろう?」

「えー、絶対ただで休ませる気なんて無いですよねー??」


赤は疑いの眼差しで、春日局様を見た。


「ついでに、白木屋のみたらし団子を買ってこい」

「ええっ!?ただのおつかい!?」


団子買う為に、忍び使うとか!!
自分で買いに行ってよ!!


「家光様の護衛はどうするんです?」


赤の言う通りだ。
この間の事もあるし、家光を一人にしたくない。


「それは問題無い。家光様は、正室、側室候補達への定期挨拶の日、今日は私と大奥に出向く日だからな」


大奥……。
今代の女将軍になるまで、女の園だった大奥は、今や男の園で、家光の婿になる為に良家の婿候補達がいる場所。


「大奥では、こちら側の人間が何百といる。そこで、何かをしてくるような馬鹿はいないだろう」


「なるほどーって、本当に休息くれるって事ですか?」


赤は驚いたように春日局様を見つめる。