時は、徳川将軍家が日本を統治する『江戸時代』。


伊賀一のくのいちであるあたし、服部才氷(はっとり さいひ)は、次期頭領となるため江戸へ修行へ来ている。


伊賀の里を出て数刻。


まずはとこで路銀(ろぎん)を稼ごうかな…。
下手したら、今日の寝床も確保出来ない!!


「父上の子供不幸モノ!!何が可愛い子には度をさせ、よ!!」


路銀も何も無しに里を放り出すなんて、親のやる事!?


父上、今、徳川の忍びとして役目を果たしてる。


いずれ、あたしも徳川に仕えるらしいけど、その為には修行が足りないからって、家を追い出された。



だから今は、忍装束ではなくて、町娘の格好をして、江戸の町にいるんだ。


生まれつきの青の瞳に、長いまっすぐな黒髪をひとつに結って、江戸の町をふらふら歩く。


「江戸のお偉いさんにでも雇ってもらうかなぁー」


そんな事を考えながら、江戸を散策すると、やっぱり自然にあふれた里に比べて、にぎやかだなと思う。


「お姉ちゃーん!!」

「うん??」


突然、呼び止められ、振り返ると、一人の女の子が駆け寄ってきた。


あれ、江戸に知り合いなんかいたかな??
まぁ、いっか!


笑顔で女の子の視線に合わせてしゃがみ込む。