当時中3のクソガキペーペーな私は、ケータイの恐ろしさを分からなかった

まぁとにかく寂しくて、友達が欲しくてLI○Eの友達募集掲示板に書き込みをしたのだ

その時はただ純粋に話し相手が欲しいだけで、下心は一切なかった

掲示板には色んな人たちがウロウロしてるのも、分からなかった

今にしてみれば我ながらバカだと思う

で、書き込みをしたら早速話しかけられた


『初めまして、こんにちは』


この人が後に私の初めての恋人になるSだ

Sは当時15歳の私より9個上の24だった

鳶をしていて、中卒だが真面目に働いている

まぁ見た目は派手だがとても優しい人だった

話しているうちにお互い気になり出し、何ヶ月か経って向こうから告白をしてきた

私も断る理由はなかったので了承し、交際がスタート

それから数日後初めて会った時、Sは私の家の近くまで迎えに来てくれた

そのまま二人で駅に向かい電車にのり、あちこち遊んだのだ

その時に、Sに求められて体を許してしまった

初デートで初めてを奪われる

ホントにアホな私である

しかし私は幸せだったため、そんなこと頭になかったのだ

恋は盲目、まさにこのこと

しかし、事件はその後起きた

それから何度か遊んで、行為をして、をしていたら急に連絡が取れなくなったのだ

まさか何かあったのではないのか?

心配になり電話をかけるも出ず

ずっと心配で夜は眠れない日が続いた

が、ある日ようやく連絡が取れたのだ


『どうしたの?心配したんだよ?』

『ごめん、今車の免許取るために合宿行っててさ(^^;』


どうりで連絡がつかないわけだ

と当時は思ったが、何度も言う

この時の私はバカである

私は何も知らない中学生だったため、この理由で納得したのだ

それから何時間か連絡が取れなくなったりする時はあったが、たまに電話をしたりしていたため満足していた

しかしここからまた急展開になっていく

ある日の夜、我が家のインターホンが鳴った

私が出ると、そこにはSがいた

否、Sに【そっくり】な人がいた


「!?」

「あ、ごめんごめん、そんなに警戒しないで?俺、Sの兄貴のRなんだけどさ」


何故兄がここにいるのだろうか

そう聞こうと思ったら、Rさんが口を開いた


「Sのやつとさ、連絡とれてる?」

「…?はい、取れてますが…」

「あーやっぱりかー」


はぁーとため息を吐き頭を抱えるRさん

何があったのか知りたくて、震える声で尋ねてたら


「知らないの?Sのやつ親父の現金約20万くらい持ち逃げして行方不明になってんの」


嘘だ

Sはそんなことする人じゃない

でも、それなら連絡がつきにくかったのも納得がいく

合宿に行ってるというのはウソで、本当は逃亡してるんだとしたら?

頭がうまく回らなかった

とりあえず、ここまで来た目的は彼女である私には辛いかもしれないがこのままではSが犯罪者になるため確保に協力してほしいということだった

Sの父親は怒り狂って警察にこのことを話そうとしてるらしい

だから、その前に見つけて確保すれば刑務所行きは免れると

このままSを逃がして犯罪者にするか、犯罪者になる前に協力してSを捕まえるのに協力するか

そんなの、酷すぎるじゃないか

協力して捕まえる、ということは即ちSを騙すということ

でも犯罪者になってしまうのはもっとイヤだった

そうなると、もう選択肢は一つしかない


「…分かりました、協力します」


結局協力することにして、その場で確保するための計画を話された

今Sと連絡が取れてるのは私しかいないらしい

そのため、Sから返事が来たらRさんに連絡し、Rさんが指示した場所と時間に行くように私がSに言う

その際は適当に理由をつけて、会いたいと称して呼び出す

呼び出したら再びRさんに連絡し、Sが動き出したことを伝えて

Sに来てもらった場所で予め確保の準備をしておき、Sが来たら捕まえる

ということだった

この時私は、自宅でSを誘導する


「捕まえる時は俺の仲間全員呼ぶから安心して」


どこが安心できるのだろうか

ヤバイ匂いがプンプンするこのセリフにゾッとしたのを鮮明に思い出す

そして決行の日

予定通りSに「会いたい」とメールを送り、呼び出す

Rさんに連絡して待ち伏せしてもらう


『Sが来た、今から捕まえる、ありがとう』


そうRさんが連絡してきてからは、しばらく返信がなかった

つまりは、今確保しているのだ

私は、脱力感に襲われてベッドに倒れ込んだ

時計を見ると、秒針がチクタク動いている

今私がこうして息をしている間にも、Sは捕まえられてるのだろう

そう考えると、罪悪感で涙が止まらなくてずっと泣いていた

何時間か経ち、Rさんから連絡がきた


『捕まえられたよ、本当にありがとう』


その言葉が皮肉にしか聞こえなくて

私はケータイを投げ捨てて、ずっと泣いていた

次の日、ふと目を覚ますと昼過ぎだった

あれから寝落ちしてしまったのだ

泣きすぎて痛む頭を抑えて水でも飲もうと立ち上がると、ケータイのランプが光っている

途端にSのことを思い出し、すぐにLI○Eを開くと


『ありがとう、さようなら』


Sから、こう来ていた

当たり前か、彼女が兄とグルで騙したなんて

そんなの別れ告げられて当たり前だもんね

またジワリと涙腺が緩む

手で涙を拭うと、


『私こそ、ありがとう、さようなら』


そう送って、Sをブロックした

最後まで既読は付かず、タイムラインも見れなかったので既にブロックされていたらしい

トーク欄を消し、LI○Eを閉じると

掲示板のアプリをケータイからそっと消した





あれから何年経ったんだろう

別に付き合って後悔はしていない

ただ、あまりに酷い別れ方をしたから

今頃何をしているんだろう、とふと思う

今でも好きという訳では無いのだが、何故かふと思い出すのだ

私の地元からSの地元は、電車で40分ほど揺られれば着く

Sの地元は私の住んでいる県では盛んな場所のため、たまに友達や彼と遊びに来るのだ

その度に、Sの姿をたまーに探す

探してどうするのかって?

とりあえず、元気かどうか確認して謝りたいなぁ

向こうは話したくないと思うだろうけど

せめて遠目からでもいいから、元気にしてる姿を見れればそれでいいのだ

しかしあれから掲示板の書き込みを消し、Rさんの連絡先も消した

大人の裏とか、男の人の本性を知れた機会だったなぁ

まぁもしあのまま続いてたら、今の彼とは出会わなかっただろうし

あの事件も必然だったのかなと思うと、人生とは不思議なものである

ちょっぴりあの事件に感謝した