「えげつない値段ね。……何?欲しいの?」

「はい……あ、いえ、流石にこんな値段じゃ手が出ないです」

ナハハ、と笑いながら元の位置にぬいぐるみを戻す。

「ふーん……」

雪ちゃんが、ぬいぐるみの顔をジーッと見つめている。

「どうかしました?」

数秒にらめっこをしたかと思ったら、ガシッ!とおもむろにイルカのぬいぐるみを抱え、レジの方へと歩き出した。

「へ……?」

ポカーンとしている私をよそに、テキパキとお会計を済ませ、私の元へと戻って来る。

「はい」

「……へ?」

ムギュッと、ぬいぐるみを私に押し付けた。

「欲しかったんでしょ?あげるわ」

「い、いただけません!こんな高価な物っ!」

私は高速で、フルフルと首を横に振った。

だって、3万8千円だよ!?簡単に貰える金額じゃないよ!

「でも、もう買っちゃったし、アタシはいらないし」

「でも……」

「いいから受け取りなさいよ。今日の記念なんだから」

ホラ!と、再度ぬいぐるみをギュッと抱えさせられる。

私は震える手で、それをギュッと抱えた。

「……ありがとうございます!凄く、凄く嬉しいです!」

フワフワもふもふなぬいぐるみに顔を埋めてお礼を言う。

「どういたしまして」

雪ちゃんの、満足そうな声が聞こえる。私は、顔を上げられないでいた。

だって、泣きそうになっていたから。