力…?
あたしにそんな力がほんとにあるんだろうか。
今まで生きてきたこの15年間。
あたしには幽霊に関わる体験なんてものは、ただの一度もない。
…ない、と信じたい。
霊感と言えば、おばあちゃんは確かに強い「何か」を持っていたんだと思う。
でなきゃ、いつもお盆におばあちゃんの家に遊びに行くたびにあんな怖い話作れないもん。
もしあれが作話…だとしたら、おばあちゃんは絶対に小説家とか脚本家になれたはずだ
。
クッションに顔を埋めたまま、チラリとヒロを見上げた。
「それで…どうすればいいの?」
やっぱり「契約のキス」をしなきゃいけないのかな……
どうしてあたしなんだろう…
もっとヒロの体を探してあげれる人はいたはずなのに。
なんのとり得もない、あたし(安達ユイ)なんだろう。
ヒロはきっと、そんなあたしの気持ちがわかったんだと思う。
背中に淡い月の光を浴びて、ほんの少しだけ眉を下げた。
「今、手で触れてみても何も起きなかった」
「…うん」
「だからやっぱり、唇で触れてみたい」
「……」
唇……
キスて事でしょ?
変なのぉ…
「うん。 わかった、やってみて?」
これでヒロの記憶が戻れば、もうヒロに会う事もないんだ。
体が痺れる事も。
変な気配を感じる事も。
だから、早く終わってほしい。
そして、あたしに平凡でいい……
夏休みを、返して……