どうして、どうして、どうして?


私の頭の中はぐるぐると混乱していた。


もう会うことはないし、連絡を取り合うこともないと思って、弘人の連絡先は携帯から消していた。
それは、私が彼に会いたくなっても連絡出来ないようにするためというのが一番の理由でもあった。


だから最初、彼から電話があった時、誰からの着信なのか分からなくて。
出るのを躊躇っていたけれど、電話はなかなか切れない。


もしかして登録してなかっただけで、知り合いからの電話なのだろうかと不安になって通話ボタンを押したのだった。


まさか、相手が弘人だったなんて。


『望月です』と言われた瞬間、全身が心臓になったみたいにドクンと震えて、みるみるうちに胸がドキドキしてしまった。


1ヶ月以上聞いてなかった彼の声で、驚くほどに私は反応してしまったのだ。


絶対に、もう2度と、誰かの『2番目』にはならないって決めたのに。
だから苦しんで決断して、彼に別れを告げたのに。
関係を解消しよう、って。
偽物だとしても、恋人なんていう響きに少しでも期待してしまいそうだったから、だから解消したのに。


それを声を聞いただけでこうもあっさり破るなんて、私はいつの間に彼をここまで好きになってしまったんだろう。


学習しない女だな、私も。