「お疲れ様です。水川さん!聞きましたよ?みどり電機の担当になったとか?大変でしょうけど、お互い頑張りましょうね!」


早朝から、満面のキラキラスマイルを輝かせて、営業一課のキングこと山川 輝一(やまかわ きいち)がやって来た。


「何それ…朝っぱらから、喧嘩でも売ってるのかしら?」


「酷いなぁ。そんな風に捉えないでください。」


小首を傾げて私の顔を覗き込むと、またニッコリと微笑んだ。


「本当は、山川くんに振られる仕事だったのよ?あなた得意でしょ?女の扱い方。…………相手先の女性に、よく聞くわよ?“彼のギャップが堪らない”って。一体どんなギャップなのかしら?とーっても気になるわ。」


「気になるなら、調べてみます?僕の深~い所まで。」


山川くんは、ジャケットの片方をチラリと開くと、意味深な微笑を浮かべた。


(きっと………こうゆう所ね。私は騙されないわよ?)


負けじと、余裕の笑みを返す。


「残念だけど、私は売約済みだから調べられないの。ごめんなさいね?」


「水川さん。いくら売約済みでも、半を押すまでは、何があるか分かりませんよ?もっと、言い値で買う人がいるかも知れない………違いますか?」


何か知っているのかと思う程の、鋭い指摘に、ギクッとする。


「なっ何を言ってるのよ!彼はとっても素敵な人よ!今更他の人になびく程、軽い女じゃないわ!!」