ケータイ小説 野いちご

暇つぶしに恋はいかが!?

知らないことばかりですよ

「大体の内容はこれでいいが、もう少し先方の意思を組んで細かいところを修正しろ。これじゃ、他でやっても同じだ。送られてきた資料は目を通したのか?」

「はい。もう一度見直します」

 今度、間山先輩と組んで行うイベントで先方に提出する書類を突き返されて、私はいそいそと席に戻った。今日は一応、チーフが家に来る予定だけどそんな雰囲気は微塵もなく相変わらず居丈高な物言いに色々な意味で頭を抱える。

 買い物はもう済ませてあるのだが、昨日は念入りに掃除をしていたら寝るのが遅くなってしまった。あくびを噛み殺して私は送られてきた資料を机の上に再び広げる。

「宮城さん、相変わらず七条チーフから厳しい駄目出しですか?」

 そのとき珍しく小田さんが近くに寄ってきた。隣のデスクが空いてるからって、その椅子に座ってこちらに距離を縮めてくる。

「うーん、なかなか難しいね」

「でも今度は間山さんと組むんだから、よかったですね」

 一緒に仕事をするのに七条チーフと間山先輩を選べと言われたら間違いなく間山先輩を選ぶ人が圧倒的多数だろう。チーフと付き合っているということを差し引いても私もそのくちである。

「そういえばこの前の日曜日、城下イベントで七条チーフと一緒にいませんでした?」

 小田さんのいきなりの発言に私の心臓はドキリと大きく跳ねた。人が多いところに二人で出かけていたら誰かに見られる可能性だって出てくるし、付き合いを隠しているわけでも後ろめたいことがあるわけでもないのに、気が付けば頭の中でなんて言い訳しようかと必死に考え始めていた。

「日曜日まで仕事に付き合わされて大変ですね」

「え?」

 しかし頭をフル回転させている間に予想外の言葉を続けられて間抜けな声が出てしまった。

「あの人、仕事の鬼だから。宮城さんもプライベート削ってまで仕事に尽くすことないですよ」

 どうやら小田さんの中では我々が一緒にいたのは疑いもなく「仕事」ということになっているようだ。そのことに安堵したような複雑なような。でもあえて事情を話すこともないので私は話を合わせた。

< 75/ 205 >