徐々に暗くなる夕焼け空は、茜色で、とても美しい。



遠くに飛ぶ烏が、いっそうに強くその美しさを際立たせる。




校庭から元気なかけ声がなくなり、彼女の声が僕の頭に響く。





長い黒髪が動くたびにゆれて、銀木犀の甘い香りが匂う。







「...って、また!」







「はっ!!」







ぼーっとしていたのか、目の前が一気に活気が溢れる。





丸めた教科書を僕の頭に向けて一発ぐらい喰らうと、





彼女は終わりの合図をさせた。






「すいません、僕、ぼーっとしてました。」







「まったく、私は時間がないのに。それに、小崎もでしょう?時間がないのは。」







そうだった。





時間がないんだ。