広い大学の中にある、一つの部屋。

窓の外はもう茜色で、50席ほどある教室には俺だけだった。

「ジュンタ」

聞き慣れた声が、俺の耳をくすぐる。

綿菓子のように甘く、ふわふわした独特の声が。

顔を見なくても、相手が分かった。

――待ってたのか、アイツ。

嬉しくて、かわいくて。

それだけで、口元が緩んでしまう。

扉の方へ振り向くと、予想通り彼女がいた。