ケータイ小説 野いちご

『ゆる彼』とワケあり結婚、始まりました。

想像と違う…。

「剛ちゃんは泣き虫だねぇ…」


ビスクドールを手にすると、おばあちゃんはいつもそう言って子守唄を歌い始める。
過去に回帰していく姿は、これまで何度となく目にした。


おばあちゃんの子守唄は面白かった。
日本語ではなく、いつも何故か英語の歌。

昔のグループサウンズが主で、しかも発音は的確にしている。
時々歌詞が重なったり、ハミングでごまかしたりする部分もあるけど、概ね間違ってはいないだろうと思う。


歌ってる時の顔は穏やかだった。
腕に抱かれたビスクドールは、お姉さんの『ユイカ』さんが作っているものだと久城さんから教えられた。

人形のパーツを一つ一つ作り上げていくとこから始める細かい作業。指先が器用なところは、きっとおばあちゃん譲りなんだ。


他の兄姉達についても、少しずつ分かり始めた。

『ジン』さんというのはご長男。
仕事は何をされてるのか知らないけれど、おばあちゃんの中では中学生くらいらしい。
頭が良くてクラス委員を務めてる。
でも、家に帰ると我が儘ばかりで、いつも一番不平を言う。


「ジンちゃんはいい子なんだけど、思春期だからやりづらいよね…」


こぼす愚痴が一番多かった。
それを言う時のおばあちゃんの中では、あたしは『サキコさん』という人になってる。

未だにその『サキコさん』の正体は不明だけど、どうやらおばあちゃんの一番信頼してる方だというのは分かる。

話す時の態度が違う。
親密だけど、毅然としている。友達と言うよりも仲間意識が強い感じ。

久城さんが帰ってきたらどういう関係の人なのかを聞いてみたい…と思っていた。


< 110/ 249 >