可南子は、久しぶりに母校へ足を踏み入れた。

昨日まで続いた雨は止み、今日は快晴で真夏のようにむし暑い。

想太は、門の前で落ち着かない様子でうろうろしていた。
今日の想太はスーツをビシッと着こなしている。
とにかくいい印象を残すことが今日の想太の仕事だと思っていたから。


「想ちゃん、行くよ」


可南子に呼ばれ、想太は大きく深呼吸して歩き出した。



二人は、可南子が過ごした中学寮の中にある応接室に通された。
寮に入ると、中学生の女の子達が想太を見てキャッキャッと騒いでいる。

可南子は小さかった頃を思い出していた。
大人になった先輩達が婚約者と共に先生方に挨拶をする姿は、本当に素敵だった。


いつかは、きっと自分だって・・・
ここにいる寮生はそうやって将来を夢見ていた。


想太は、通された応接室の壁に飾られているマリア様をずっと見ていた。
こんな場所に六年間も住んでいた可南子は、本当に凄いと思いながら・・・