可南子は、想太を睨んで言った。


「私の方が、想ちゃんに捨てられてたみたいね。

東京にいたなんて・・・

なんで、連絡をくれなかったの?」


可南子は、こういう事を言っている自分が情けなくなった。
もう、15年も前の事なのに・・・


「可南子こそ、何だよ。
お前がそんな事言える立場かよ。

一通も手紙を書かなかったくせに・・・」



「え?」



「俺は、可南子が福岡に行った日から毎日手紙を書いた。
ばあちゃんに事情を話して、切手をたくさん買ってきてもらって、毎日手紙を出したのに、可南子からは一通も来なかったよな。

あの約束を真剣に考えてたのは俺一人だったって子供ながらに痛感したよ」


可南子は、動揺して何も言えなかった。


「可南子?」



「想ちゃんからの手紙、一通も届いてない・・・」