「ねえ、今度、この部署に赴任してくる部長の噂、聞いた?」


隣のデスクに座る一つ年下の美咲が、興奮気味に話してきた。


「聞いてない」


可南子がそっけなく答えると、美咲は私の側にきて小さな声で教えてくれた。


「年は27歳。

日本の大学を卒業した後に、ニューヨークの大学で経営学を学んで帰国と同時にこの会社に配属だって。
身長は180㎝、モデル並みのイケメンらしい。

そして、いきなり部長のその理由は、なんと、その人、K&Rグループの御曹司なんだって」


可南子はあまり興味を示さなかった。
お金持ちで、イケメンで、御曹司?
どうせ、ろくでもない人間に決まっている。


「まだ、噂なんでしょ?」



「うん。
でも、今日の午後に挨拶に来るらしいよ」



「ふ~ん」


イケメンに御曹司、お金持ちというワードが並ぶだけで、可南子の体に虫唾が走った。


全く興味なし。
残念ながら。