◆



「エレオノーラ、今日からここがお前の家だ」

 わたしよりもずっと背が高い彼はそう言って、庭付きの――とてつもなく大きな屋敷を鋭く尖った顎で示した。



 無愛想な彼が口にした内容はけっして聞き間違いではない。だって彼はわたしの名を添えてそう言ったんだもの。

 それに、ダークグレーの鋭い鷹の目が、これといって何の特徴もない黒い髪と枯れ枝のように細いわたしをまっすぐに写し出している。


 わたしの名を呼んだ彼の名はリュシアン。

 青みを帯びた黒髪に、細身だけど、広い肩幅。推測だけど、年齢はわたしよりも十二歳は年上なんじゃないかしら。

 ものすごく落ち着いているもの。おそらく三十歳前後ね。


 彼――リュシアンはこの街でとてつもなく大きな屋敷を持つ大富豪として有名だ。


 そして、無口で無愛想だということも有名。


 対するわたしはというと、とても貧しい生活を送っていた。