昨日、男の人を見た。






校舎裏の紅葉の木の下、その人は立っていた。





木を見上げ、葉が揺れるのをずっと見ていた。




何故かその姿から目が離せなくて、




あたしはじっと見つめていた。




どことなく苦しげなその姿に息が詰まった。




不意に男の人の赤い目があたしを見た。




その目に射抜かれたように、




あたしの体は凍りつき




動けなくなった。




ゆっくりと近づいて来る赤い目。




心臓の音がどんどんうるさくなる。










ぷつっ……。









あたしの首筋に走る痛み。




ゆっくりと吸い上げられていく



自分の血液を感じながら、



あたしは目を閉ざした――










気がついた時、



あたしはベットに寝転んでいた。




…あれ?あたし…いつ寝たんだっけ。




鏡に映る自分の首筋に刺されたような傷。




身に覚えはなく、不思議に思った。










あたしの名前は 好巳 あかね(このみ あかね)




今年、高2になった女の子です。




身に覚えのない首の傷のことを考えながら、




時間は過ぎ、放課後になった。





「痛っ……。」





首の傷が急に痛み始める。




気が狂いそうな程の激痛。




ぼんやりと昨日のことを思い出しながら、




あかねの足は無意識に校舎裏へと向いていた。




揺れる紅葉の木の下、赤い2つの目。





…何であたしっ…こんな所に…





脳裏によぎる昨日の痛み。





やだっ……逃げなきゃっ!





迫り来る赤い目。










ぷつっ……。










…嫌…やめて。





動いて…あたしの体…。





嫌だ…






嫌、










嫌っ!!…










「やっ…めてっ!!…。」










あかねは男の人の手を



勢い良く掴み振り払った。