1週間後


「っ……どうして……」


私は部活後のプールで1人、練習に没頭していた。
一刻も早く前みたいに泳げる様になる為に。

でも、どれだけ練習しようと駄目だった。
プールで襲われた時の事が頭に浮かびパニックを起こしてしまう。
まだ1週間だけど。
泳げないという現実が私にとってはかなりキテる。
泳げる事が当たり前だった私にとって今の状況は凄く辛い。


「何で泳げないのよっ!!」


私は仰向けになりながらプールに浮かぶ。
悔しい。
泳げない事がこんなに苦しいなんて思ってもいなかった。

初めてぶち当たった壁に私は乗り越える手段が分からなかった。
これからどうしたらいいかなんて想像もつかない。

ぼんやりと天井を見つめながら私は浮かび続ける。

頭に浮かんだのは先生と高岡くんの顔。
2人は練習に付き合うと言ってくれたが、こんな無様な泳ぎを見せたくなくて断った。
特に先生には見られたくない。

“私の泳ぎが好き”
そう言ってくれた先生に今の私の泳ぎを見せるのは嫌だった。

でも泳げない私を1人にする訳にもいかず、結局先生には練習に付き合って貰っているが今は、職員室に用事を片しに行っているから1人だ。
そんな事を考えてれば私を苦しめる前兆が降りかかる。


「っ……まただ……」


足を掴まれた様な感覚が襲ってくる。
落ち着け、落ち着け。
必死に自分に言い聞かせる。
でも……。


『俺たちが相手してあげるよ~』

『可愛かったよ真希ちゃん!』


今回のはかなり鮮明で私は為す術もなく沈んでいく。
誰……か。
助けを求めて手を伸ばすが無意味だ。
誰もいないプールで助けなんか来るわけない。
私はここで死ぬんだ。
諦めて目を瞑ろうとした、その時だった。


「高瀬さん!!」


遠くで私を呼ぶ声が聞こえてきた。
でも意識は遠のいていく。
目を閉じるギリギリで誰かが私に手を伸ばしている光景が目に映った。