3日後


私は結局先生に話す事はしなかった。
でも先生を見ると口が滑りそうで私は避ける様な態度をとってしまう。


「高瀬!」

「高岡くん」

「今日は水泳部こいよ!!」

「ごめん、やめとく」

「……そっか。でも待ってるからよ!」


高岡くんは残念そうな顔をしながらも私に大きく手を振ってくれた。

あの日から、高岡くんが水泳部の皆の前で告白をしてくれた時から。
彼は積極的にアピールをしてくる様になった。


『答えは今はいらない。
俺の事をもっと知ってから答えを出して欲しいからよ!』


告白された次の日、会った瞬間に言われたのがこれだった。
一瞬何の事か分からなかったけど高岡くんの気遣いが嬉しくて彼の事を知ろうと決めたんだ。
いい加減な気持ちで答えは出したくない。
だから、高岡くんがああやって言ってくれて良かった。


「……」


高岡くんの問題はいいとして。
私には“水泳”という大きな問題があった。


「泳ぎたい……か……」


ずっと逸らし続けてきた私の想い。
それは水泳を嫌いになった後も変わらなかった。
泳ぎたいという気持ちは確かにある。
でもその裏に“恐怖”と“不快感”がある。

恐怖は中学の時の水泳部のコーチと男子水泳部員に。
不快感は自分に対してだ。

もしあの時、私が違う対応をしていたら。
人生は変わっていたのかもしれない。


「……」


私は自嘲に近い笑みを浮かべて教室を出た。