『北上 菜花(きたがみ なのは)さん
話があるから、昼休みに中庭の桜の木の下に来て下さい』



朝、学校へ行くとノートの切れ端が靴箱の中に入っていた。


ぶっきらぼうでゴツゴツしている、いかにも男子が書いたと思われるいびつな文字。



こ、これって……いわゆる。



冷たい風がヒューッと昇降口を通り抜ける。


思わず身を縮こめたその時ーー。



「菜花ー!おっはよー!どうしたの?こんなところでボーッとしちゃって!」



後ろからパシンと背中を叩かれ、思わず顔をしかめた。


朝からこんなに元気なのは、萌奈(もな)らしいといえば萌奈らしいけど。


それにしても、もうちょっと手加減してくれてもいいんじゃないかな。



さすがに柔道歴10年の萌奈の張り手は、細身で小柄なあたしにはキツい。