―――お見合い当日


私は父親にはお見合いするとは言わず家を出て、桐谷さんに教えてもらった住所にタクシーで向かったんだけど、到着した家の前で暫し呆然と立ち尽くしていた。


だって、こんな凄い豪邸だなんて聞いてなかったんだもん。


高い塀に囲まれて家の全貌はよく分からないが、都内でこの敷地面積となると、とてつもない固定資産税を払ってるはず。間違いなくセレブだ。


おっかなびっくりチャイムを鳴らすと、鉄柵の門の横の扉が開きお手伝いさんらしき中年の女性が顔を覗かせる。


「あ、こんにちは。桐谷さんの紹介で来ました。吉見田蛍子と申します」

「はい、お待ちしておりました。どうぞこちらへ……」


お手伝いさんの後に続き広い庭を緊張しながら歩いて行くと、立派な洋館が現れ、開いた扉の先は太陽の日差しが降り注ぐ吹き抜けの玄関になっていた。


スゲ~……私、完全に場違いなところに来てしまった……


こんな家に住むのが夢だったけど、いざとなると尻込みしてしまう。それに全く落ち着かない。結局、私は根っからの貧乏性なんだ。


そして案内されたのは、1階の洋間。引きこもり君の親御さんと思われる男女ふたりが神妙な顔をして、これまた高そうなレザーのソファーに座っていた。


挨拶を済ませふたりの向かいのソファーに座ると、突然お父さんが泣き出し、私に頭を下げてきたから驚いて目が点になる。


「蛍子さん、どうかお願いします。司を普通の人間に戻して下さい」

「え゛っ?」