トントントントン


新品のまな板の上を、これまた新品の包丁がリズムよく料理の音を奏でる。

料理は得意な方で一応、教室も通っていた。

相手に一流を求めるからには、それに相応しいように自分も磨くのが私の流儀だ。

今日は初めての手料理を振る舞う日。

張り切ってランチョンマットやカトラリーを揃えてみる。


「今日、何時に帰って来るのかな?」


先ほどメールには返信が来ないまま、時間だけが経っていた。


「きっと、忙しいのね。」


二人分の料理を前に少しだけ虚しい気分になる。

この後ギリギリまで待っても何も連絡は無かった。

仕方なく一人で広いジャグジーのお風呂に入り、下ろし立てのランジェリーを意味もなく選んで身につけた。


「せっかく高いのに全部買い換えたのに……千春さんのバカ。」