「……なあ、いつまでこうしてる気だ?
離れたくねえなら、連れて帰るぞ」
『…へっ?!』
あわわわわ、私、琉聖くんにくっついた
ままだ!!
『ご、ご、ご、ごめんっ!!』
慌てて離れると、琉聖くんは、右の口角
を少しだけ上げてニヤリと笑った。
「さて、帰るか」
号令のような、琉聖くんの一声でみんな
は、のどかな田園の道を、歩き始めた。
あれ、紗夜は?
きゃああー!!捕まってるじゃん!!
『こらあ、紗夜を返せえ!!』
「何だ、テメエのかよ、クソッ」
どさくさに紛れて、紗夜を連れ去ってい
た仲間から必死で取り返すと、みんなは
一斉に笑った。
みんな口が悪いし、冗談なのか本気なの
か、ときどき分からなくなるけど、この
飾らない空気が好き。
それに、いつもみんなの中心で笑ってる
器のデッカイ琉聖くんが、好き。
あれ、私、いい匂い。
これ、琉聖くんの、香水の匂いだよね?
さっきくっついた時に、匂いが移ったん
だ。たったそれだけのことなのに、この
一体感が、何だか嬉しい。
移り香のせいで、さっきのことを思い出
してしまう。背中にそっと回しただけの
琉聖くんの腕が、自然で、心地よくて、
時間を忘れてしまってた。
思い出すと、胸がジーンとする。